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マンションやビルの多くに貯水槽が設けられています。貯水槽は各部屋の水回りまで届ける水を溜めているので水槽は大きく、大量の水が貯えられています。
しかし、その大きさ故に清掃が難しいという特徴もあります。
本来、飲料水にもなる上水道はその水質管理を各自治体で行っていますが、貯水槽がある場合はその管理がオーナーや管理会社になります。
水質管理をする為に必要なメンテナンスを定期的に行っていないと法律に違反する恐れがあります。
今回は貯水槽の清掃に関しての注意点や業者の選定、費用相場等を紹介して行きます。管理者の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
貯水槽の水質を良い状態に保つ為には、定期的にメンテナンスを行う必要があります、そして、水質維持の為に行うメンテナンスは「貯水槽内の清掃」と「水質検査」です。
尚、定期的な貯水槽内の清掃と水質検査の実施は法律、法令でも定められています。
それだけ人の体内に入る水道の管理は重要ということです。
具体的な法律、法令の内容と業者による貯水槽清掃はどんな事をするのか、また清掃にはどの位の時間がかかるのか等を見て行きましょう。
貯水槽に関する法律、法令は以下のように定められています。
第34条の2
水道法 第34条の2 一項 水道施行規則第55条
※簡易専用水道とは、貯水槽の有効容量が10㎥以上のものを指します。
ちなみに10㎥以下のものは「小規模貯水槽水道」と言われ、上記法律、法令には該当しません。
ただし、各自治体の条例に定期清掃や水質検査が義務付けられていることもありますので、確認する必要があります。
要約すると、有効容量が10㎥以上の貯水槽は年一回以上、定期的に清掃を実施することが法律で決まっているということです。
ちなみに貯水槽には「受水槽」と「高架水槽」という2つの種類があります。それぞれどのような違いがあるのかをご紹介いたします。
受水槽は地上や地下にある貯水槽のことを言います。この受水槽に溜まった水は、揚水ポンプであれば屋上にある高架水槽まで水を送り、加圧ポンプであれば各家庭の水回りまで水を届けています。
受水槽は地上や地下にあるので清掃面で考えると高架水槽よりも清掃しやすいと言えるでしょう(清掃用具や高圧洗浄機の準備、移動が楽)
高架水槽は建物の屋上にある貯水槽のことを言います。揚水ポンプで受水槽から送られてきた水を溜めていて、高架水槽に溜まった水は重力を利用して各家庭の水回りまで届けられます。
高架水槽があるマンションには必ず地上や地下に受水槽があるので、貯水槽の清掃は毎回最低2槽する必要があります。
貯水槽内の清掃はどんな事を行っているのでしょう?ここでは業者が行う貯水槽清掃の内容、水質検査、作業写真、報告書の作成などを見て行きましょう。
貯水槽の清掃方法に関して細かな取り決めはなく、実際は業者によって使用する掃除用具も違う為、清掃手順に違いはあるようです。
しかし、大きくかけ離れることも無いので基本的な清掃方法を見て行きましょう。
業者によっては高圧洗浄ではなく、水道のホースで水を流すケースやブラッシングをせずに高圧洗浄で汚れを落とすケースもある様です。
清掃範囲は立方体の貯水槽内6面(床、天井、壁4面)全てです。
ただし、天井は水が触れないので、水蒸気や水跳ねによるカビや汚れが確認できた時に限ります、目視してカビや汚れの付着が無ければチェックのみで終わることも多いようです。
水質検査は、厚生労働大臣の登録を受けた検査機関による水質検査が6ヶ月以内に1回等、遊離残留塩素の検査は7日以内に1回と法令で決まっています。
尚、残留塩素の検査はDPD法で行われることがほとんどです。DPD法は検査キッドがあれば誰でもできる簡易さなので、管理人や管理会社によって行われるケースが多いようです。
具体的な測定方法としては、検査キッドの容器に水を汲み、その中に試薬を入れ、変化した色の濃さによって残留塩素濃度を測定します。
貯水槽の清掃時には清掃前と清掃後に残留塩素を測ります。
残留塩素の基準値は0.1ppm以上となっていますが、清掃などで貯水槽内に人が入った後は0.2ppm以上と定められています。
残留塩素濃度が低下すると細菌の繁殖や藻の発生原因となる為、注意が必要です。
作業写真、報告書は清掃後に業者から送られてくるものです。
この作業写真、報告書の存在は重要です。
清掃中は貯水槽内を見れないのでどんな清掃をしたか、作業前後でどれ位キレイになったかが分かりにくいものです。
その点、作業写真と報告書があると、清掃内容、状態が明確になります。
基本的には作業前、作業中、作業後の写真が添付され、報告書にはどのような状態であったか、どのような作業をしたかなどが記載されています。
この作業写真や報告書を保管しておくことによって、過去の状態と比較が出来るので管理の役にも立ちます。
ちなみに貯水槽の清掃、水質検査の記録は5年間保管をしておく必要があります。
作業写真、報告書の対応をしていない業者や、対応してくれる場合でも有料になる業者もある様なので依頼の段階で確認しておくことが大切です。
貯水槽の清掃にかかる時間を把握しておくことはとても重要です、なぜなら「貯水槽の清掃時間=断水時間」となることが多いからです。
貯水槽の清掃にかかる時間は貯水槽の大きさや高架水槽の有無によっても変わるので、一概に〇時間とは言えませんが目安は以下の通りとなります。
受水槽(1槽) | 受水槽と高架水槽(2槽)、 受水槽(2槽) |
|
---|---|---|
貯水槽内清掃時間 | 1時間から1時間30分 | 2時間から3時間 |
貯水槽内消毒時間 | 1時間から1時間30分 | 2時間から3時間 |
貯水槽清掃時間(合計) | 2時間から3時間 | 4時間から6時間 |
貯水槽1槽の清掃であれば2時間から3時間位、2槽の清掃であれば4時間から6時間位が目安となります。
例えば1槽の清掃を1時間程度で終わる業者があったとしたら、しっかりと清掃や消毒が出来ていない可能性が高くなります。
逆に5時間、6時間とかかっている場合は何かトラブルが発生している可能性も考えられます。
この様に時間から判断できる事もありますので、目安の時間を把握しておくことは重要です。
貯水槽の清掃を怠ったことによって起こるリスクは大きく分けて以下の2つです。
それでは一つひとつ見て行きましょう。
貯水槽の定期的な清掃は努力目標では無く、必ず行わなければいけない行為として法律で定められています。
なぜ、清掃が法律で定められているかと言うと、人の健康に関わることだからです。
飲料水としても使用される貯水槽の水は、それだけ管理が重大であると言えます。
簡易専用水道に該当する貯水槽の清掃や水質検査を法律で定められた頻度で行っていない場合は水道法違反となり、100万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
また、この罰金は管理会社だけでなく、オーナーや施設の責任者にも科せられます。
貯水槽の定期的な清掃、水質検査をしていないと貯水槽内に藻やカビが発生したりサビによる腐食が起こったりと、水質が悪化しやすくなります。
また、貯水槽に設置されている防虫網や通気管に不具合が起こっていた場合は、害虫が侵入して水質に影響を及ぼす恐れもあります。
これらのケースは経年劣化によって起こりやすくなりますが、定期的な清掃や水質検査を行っていれば早い段階で気付く事が出来、対処が出来るので水質を悪化させるリスクは低くなります。
定期的な清掃、水質検査を怠り、衛生上問題のある水を供給しているとそれを飲用した人の健康を害する恐れがあり、状況によっては賠償問題に発展する恐れもあります。
それでは、貯水槽清掃を依頼する業者はどのように選んだら良いのかを見て行きましょう。
貯水槽の清掃業者を探す時のポイントは「建築物飲料水貯水槽清掃業の登録をしている業者」を探すということです。
「建築物飲料水貯水槽清掃業」の登録には貯水槽清掃作業監督者の有資格者であることや機械器具の保有等、様々な基準があり、それをクリアしていなければなりません。
未登録業者でも貯水槽の清掃をすることは出来ますが、その仕上がりには大きな違いが出て来るでしょう。
貯水槽内の清掃は車や家の外壁の清掃と違い、ただ高圧洗浄をすれば良いというものではありません。
次亜塩素酸ナトリウム溶液による消毒実施や決まった消毒の回数を行うことなども貯水槽清掃の必須事項です。
これらの必須項目を確実に遂行できるのが、建築物飲料水貯水槽清掃業の登録をしている業者です。
建築物飲料水貯水槽清掃業の登録で必要になる資格は「貯水槽清掃作業監督者」です。
貯水槽清掃作業監督者とは受水槽、高架水槽等建築物、飲料水の貯水槽の清掃、管理、監督を行う上で必要となる知識を習得した者となります。
資格の取得方法は指定の貯水槽清掃作業監督者講習会を受講し、修了試験に合格することです。
建築物飲料水貯水槽清掃業の登録は、貯水槽清掃作業監督者が配置されていること、揚水ポンプ、高圧洗浄機、色度計、残留塩素測定器等を有すること、機械器具を適切に保管することのできる専用保管庫を有すること等の基準を満たす業者が、都道府県知事に対して申請を行うことによって、登録を受けることができます。
建築物飲料水貯水槽清掃業の登録業者であるかどうかを確認する方法は、ホームページでの確認か電話での確認となります。
未登録業者でも貯水槽の清掃は可能です。ただし未登録業者の場合、その仕上がりが満足のいくものになっているかどうかは不透明です。
ではなぜ未登録業者に依頼をするのでしょうか?要因には以下のようなことが考えられます。
そもそも貯水槽の清掃に資格があることを知らなければ、依頼した業者が登録業者なのか未登録業者なのかがわかりません、中には未登録業者に依頼をしてしまうこともあるでしょう。
これは知っていれば回避できることです。
注意したいのは料金での判断です。
安さが一番の優先順位になってしまうと「清掃なので未登録でもそんなに変わらないでしょう」と都合良く考えてしまいがちです。
貯水槽の管理で一番高い優先順位にしなければいけないのは「水の安全性」です。
そして水の安全性を確保してくれる清掃を実施できるのが建築物飲料水貯水槽清掃業の登録業者なのです。
未登録業者による貯水槽清掃は、水質の悪化を招くことも考えられるので気を付けましょう。
貯水槽には様々な大きさのものがある為、貯水槽を清掃する場合も大きさよって費用が変わります。
費用相場を知ることで業者を選ぶ時の効果的な判断が出来るようになります。
それでは、貯水槽清掃費用、水質検査費用、それぞれの費用相場を見て行きましょう。
貯水槽の大きさ毎の料金相場を一覧にしていますので下記表をご覧ください。
貯水槽容量 | ||||
---|---|---|---|---|
料金相場 | 5tまで | 10tまで | 15tまで | 20tまで |
20,000円~30,000円 | 30,000円~50,000円 | 40,000円~60,000円 | 50,000円~70,000円 |
簡易専用水道は10㎥以上の貯水槽なので、10t以上の貯水槽容量となります。
ちなみに10t未満の貯水槽は小規模貯水槽水道となります。
表のように貯水槽が大きくなればなるほど清掃費用が高くなります。
尚、高架水槽の清掃費用は受水槽と一緒に行われることが多い為、受水槽の清掃費用よりも安めの設定になっていることが多いです。
水質検査の費用は8,000円~10,000円位が相場となります。
また、水質検査は貯水槽清掃と一緒に行われることが多く、貯水槽清掃、水質検査のセット費用として提示されることもあります。
未登録業者の場合、水質検査を行っていない(対応していない)業者もあるようなので、依頼の段階で確認しておくことが大切です。
貯水槽の清掃は業者に依頼するだけで良いという訳ではありません。
貯水槽清掃を行う上で管理者、又は管理会社にも事前に準備しなければいけないことがあります。
清掃業者の選定から清掃の手順まで、基本的な流れを紹介して行きます。
清掃業者の選定で大事なことは、建築物飲料水貯水槽清掃業の登録をしている業者を探すということです。
またホームページで貯水槽の清掃実績をチェックすることも有効です。
作業事例が多くある業者であれば貯水槽清掃に慣れているので、満足の行く仕上がりが期待できます。
1社に決め込んで依頼をすると、想定よりも見積もりが高かった場合や対応に不満を感じる場合などに困りますので、2~3社からは見積もりを取るようにしましょう。
複数社から見積りを取る場合はそれなりに時間も要しますが、それも見越して余裕を持って依頼をすることが大切です。
貯水槽を清掃する場合は居住者に事前告知をする必要があります。
告知は掲示板への掲示や各戸へのチラシで行われることが一般的です。
受水槽のみのマンションの場合は断水になる時間が出て来ますので、未告知で行うとトラブルになる危険性があります、必ず事前告知を忘れないようにしましょう。
では告知文にはどのようなことを記載したら良いかを見て行きましょう。
告知文には最低限以下の内容が必要となります。
告知時期は清掃の2~3週間前が一般的です。
また、高架水槽がある、受水槽が複数あるなど断水の必要が無い場合でも貯水槽清掃の事前告知はしておきましょう。
清掃前の貯水槽内の水の状態を確認する為に水質検査を行います。
この時の検査では残留塩素の測定が行われます。また、水の状態に異変が無いかもチェックします。
におい、味、色、濁りの状態を確認する
(色度5度以下、濁度2度以下、遊離残留塩素0.1㎎/ℓ以上等)
貯水槽清掃が2回目以降の時は清掃前水質検査が大事で、もし残留塩素の測定値に異変があったり水の状態に異変があったりした場合は前回の清掃がしっかり出来ていないか清掃のスパンが長すぎるかのどちらかです。
前回が建築物飲料水貯水槽清掃業の登録業者に依頼していた場合は、スパンが長すぎると考えて良いでしょう。
貯水槽の清掃回数の規定は「年一回」ではなく「年一回以上」なので、次回は前回から今回よりも短いスパンで行う必要があります。
前回清掃を未登録業者に依頼していた場合は、清掃がしっかり出来ていないことが原因とも考えられます。
ここからが清掃の手順となりますが、まず貯水槽への補給バルブを閉めます。
補給が止まったことを確認してから排水のバルブを開き、排水をして行きます。
大量の水が一気に排水されるので、排水の部分はチェックしておく必要があります。
万が一、対象の排水管に詰まりがあった場合は、行き場を失った水が何処かから溢れ出て来る恐れもありますので、排水が順調かどうかを確認しながら行います。
また、補給バルブ、排水バルブに異変が無いかもチェックします。
バルブを回した時に「固い」「重い」などの異変があった場合は、対処をして行くことになります。
貯水槽内の排水が完了して中が空になったら貯水槽内部の清掃を行います。
清掃の仕方は業者により様々ですが、ブラシやタワシによるこすり洗い、高圧洗浄などが一般的です。
貯水槽内全面を清掃して行きますが目視で汚れているところを念入りに行います。
汚れが落ちたら水で洗い流します。
室内の清掃が終わったら次に消毒作業を行います。
消毒は次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて行われます。
有効塩素50~100㎎/ℓの次亜塩素酸ナトリウムを用意し、貯水槽内に散布して行きます。
散布後は30分以上放置してから水洗いをします。この消毒作業を2回以上繰り返し行います。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを吸収させて製造されたものです。
色は淡緑黄色の透明な液体です。
においは強く、塩素に似た特有の臭いがします。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は水道水やプール水の殺菌、脱臭等に良く使用されています。
プールに行った時に感じる「プール臭い」という臭いは、この次亜塩素酸ナトリウムの臭いです。
消毒の水洗いが終わったら、排水のバルブを閉めて補給バルブを開けます。
水張りに関しては基本的に溜まるのを待つのみです。
多くの業者は、この間に不要になった機材や道具の片付けも並行して行っています。
清掃後の水質検査を行います。
チェック内容は清掃前の検査と同様で、におい、味、色、濁りの状態を確認します。
残留塩素の測定は人が入った後の貯水槽なので遊離残留塩素0.2㎎/ℓ以上が必要になります。
水質検査で貯水槽清掃作業は終了となります。
基本的に作業写真や報告書は後日、送られて来ます。
作業写真や報告書、並びに水質検査の結果は5年間保管する必要があるので、専用ファイル等を作成して管理すると良いでしょう。
貯水槽の清掃は年一回以上行うことが法律、法令で定められています。
そして守られないと100万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
貯水槽の清掃は建築物飲料水貯水槽清掃業の登録業者に依頼することがポイントです。
未登録でも清掃は行なえますが、仕上がりは不透明な部分があります。
安全第一で考えて登録業者に依頼するようにしましょう。