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マンションやビル等、高さのある建築物には給水ポンプが使われています。
この給水ポンプは上階に水を持ち上げる為の機器ですが、給水ポンプには揚水ポンプ、加圧ポンプ等の種類があり、ポンプによってそれぞれの給水方式も変わっています。
その中で一番新しいポンプに「ブースターポンプ」というものがあります。
今回はこのブースターポンプについて、仕組みや設置基準、故障時の対応や料金相場まで詳しく解説して行きます。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
それではブースターポンプ(増圧ポンプ)という給水ポンプは、どういった機能のポンプなのかを見て行きましょう。
ブースターポンプの給水方式は「直結増圧給水方式」と言われ、水道本管にポンプを直結して使用しています。
ポンプのモーターで高速回転する羽根車により給水口から水を吸い込み、高い圧力をかけて送り出し、各所まで水を供給する仕組みとなっています。
水圧は制御装置でコントロールされているので、安定した水圧で水が出るようになっています。
他のポンプと違って受水槽や高架水槽といった貯水槽が無いので、水質は安定しています。
また、貯水槽の清掃や消毒といった定期的なメンテナンスの必要もないのでランニングコストが抑えられるというメリットがあります。
一方、故障や停電でポンプが止まってしまうと、一切水が使えなくなるというデメリットもあります。
ブースターポンプが使われているのは主にマンションやビル等、高層階の建物です。
また、ブースターポンプは貯水槽を必要としないので、貯水槽を設置するスペースがないマンションやビルなどでは優先的に選択されます。
それ以外のマンション・ビルでは揚水ポンプ・加圧ポンプ・ブースターポンプの内、基本的にどれでも設置できますが、メリットやデメリットを考慮して選択されます。
近年では省スペースによる景観の良さ、水質の良さ、ランニングコストが抑えられる点などのメリットにより、他ポンプからブースターポンプに変更するケースも増えています。
高層階マンションやビルでは水を持ち上げる為に直結給水ブースターポンプが使用されます、そしてブースターポンプ1機で複数の部屋へ水を供給しています。
しかし、ブースターポンプの中には家庭用のブースターポンプもあります。
従来のブースターポンプが1機で多くの家庭まで水を供給するのに対し、家庭用のブースターポンプは1機で1戸を賄うことが多いです。
大きさも小型で価格も安く、戸建て、マンション関係なく、取り付けが出来ます。
水を高層階まで持ち上げることが直結給水ブースターポンプの一番の目的ですが、家庭用のブースターポンプは水圧の補助が一番の目的です。
それでは、どの様なケースの時に家庭用ブースターポンプが必要になるのかを見て行きましょう。
地域的、立地的な問題で元々の水圧が弱い時の増圧用として使用されます。
給湯器はある程度の水圧が無いと失火してお湯にならないので、失火防止用として使用されます。
井戸ポンプの故障でなく水位低下によって水圧が弱くなった場合、圧力不足の補助として使用されます。
太陽熱温水器の水圧が弱い時の増圧用として使用されます。
増改築によって水の使用場所が増えた時の増圧用として使用されます。
これらのように、水圧が弱い時の補助用、増圧用として使用されるのが家庭用のブースターポンプです。
ブースターポンプ(増圧ポンプ)は水道本管にポンプを直結するので「給水装置」に該当します。
そして、給水装置の取り扱いに関しては水道局で条例などの決まりごとがある為、ブースターポンプの交換工事は多くのケースで事前の申請手続きが必要になります。
また、自治体によって違う部分もあるので、設置を希望する自治体への確認は必須となります。
それではブースターポンプの設置基準の一例を見て行きましょう。
プ―スターポンプ設置基準一例 |
---|
・対象となる建築物の階高は10階程度までとする |
・用途種別は専用住宅、共同住宅、事務所ビル、店舗・事務所付住宅、店舗・事務所付共同住宅等とする |
・ブースターポンプ(増圧装置)は日本水道協会規格(水道用直結加圧形ポンプユニット)に適合しているものとする |
・全揚程と吐水量を満足するブースターポンプ(増圧装置)を選定する |
・ブースターポンプ(増圧装置)の呼び径はメーター口径以下とする(複数のメーターを設置する場合は給水主管口径以下) |
・非常・故障時用の直圧共同水栓を設備する |
今回紹介した一例は比較的にオーソドックスな設置基準です。
ただし、自治体によっては決まり事にはなっていないものがあったり、更に他の要因がプラスされていたりと様々です。
ブースターポンプの設置にあたっては気をつける事が2点あります。
それは「住宅に適したポンプを選ぶ」ことと「設置する場所」についてです。
その住宅に最適なポンプを選ばないと設置しても満足な結果をえられないかもしれません。
また設置場所も気をつけないと、後から後悔することにもなりかねません。
そこで、ブースターポンプの選び方とマンションなどでの設置場所について見て行きましょう。
ブースターポンプを選ぶ時は「流量」と「圧力」に注目することで、目的にあったポンプを選ぶことができます。
流量は一定時間内に送り出す事のできる水の量で、ガロン/分、リットル/秒の単位で表されます。
圧力は馬力と圧力容量のことで、数値が大きいほど水圧を高める効果があります。
ブースターポンプには遠心ポンプ、ジェットポンプ、水中ポンプなどの種類があります。
遠心ポンプはマンションやビル等、複数の階、複数の戸数がある場所の水圧を高めるのに効果的です。
ジェットポンプ、水中ポンプは家庭用で使われることが多く、ジェットポンプは浅井戸、水中ポンプは深井戸に最適です。
このように一口にブースターポンプと言っても、いろいろな種類や性能のポンプがあります。
ポンプは慎重に選ぶ必要があり、目的・用途に合ったものを選ぶことが重要です。
マンションやビルでのブースターポンプの設置場所は、どこに設置しても良いという訳ではありません。
設置場所に関しても決まり事があります、以下をご覧ください。
ブースターポンプを設置する場合は上記の内容を遵守する必要があります。
また、設置後、使用して行く最中に大切になるのは「維持管理上十分なスペースを確保する」という点です。
ポンプ室やポンプ周りは必要があってスペースを確保しているので、対象範囲内に物を置いてはいけません。
物置きと化すことの無い様、管理して行くことも大事です。
ブースターポンプにも耐用年数があり、使い続けていればどこかで必ず故障します。
ちなみに、ブースターポンプの耐用年数は約15年と言われています。
故障はいつか必ず起こりますが、重要なのは故障した時の対応です。
それでは、故障した時にどうしたら良いのかを解説して行きます。
ブースターポンプの故障と言っても様々な症状があります。
まずは起こり得る症状から見てみましょう。
どれも故障していますが、分類すると1~3は完全に水が出ない、もしくは出なくなる故障で4~7は、水は出るが異変が起きている故障です。
ポンプの故障、不具合が発生した時にはすぐに業者へ連絡することが大切です、1~3はもちろんのこと、4~7の故障であってもすぐに業者へ連絡する必要があります。
なぜならいつ完全停止して水が全く出ない状態になるか分からないからです。
水が出ないと普通の生活が出来なくなりますので早期対応が必須となります。
どんな故障であってもすぐに業者へ連絡するようにしましょう。
連絡が早ければ居住者に負担を強いる期間も短くなり、改善するまでの時間も早くなります。
水道局指定給水装置工事事業者は「水道局指定店」や「指定工事店」などという言われ方もしますが、「給水装置工事が適切に行える業者」として各自治体の水道局に認可された事業者のことを指します。
ブースターポンプは給水装置に該当しますので、先ずは水道局指定給水装置工事事業者の中から探すことが大切です。
ただし、水道局指定店であればどの業者でも良いという訳ではありません。
指定工事店といっても数は多く、正直ピンからキリまであるのが実状です。
そこで判断ポイントとなるのが、給水ポンプの対応実績の有無です。
ホームページを確認すれば給水ポンプの対応実績がわかるので、対応実績のある業者を探しましょう。
経験値の高い業者であれば安心感も違います。
ブースターポンプが故障した場合、その日に修理できるケースは少ないです。
基本的に部品交換等の修理はメーカーへ依頼することになります。
ただし、メーカーの場合、訪問までに時間がかかったり、訪問・点検をするだけで費用が発生したりすることもあります。
まずは、上記で解説した水道局指定給水装置工事事業者に見てもらうのが良いでしょう。
ちなみに、その日に修理できるケースもあります、それは再起動で改善する場合です。
ポンプが止まっている時に限りますが、電源のON/OFFや電源プラグの抜き差しで復旧するケースもあります。
直結給水ブースターポンプの修理や交換の料金相場を見て行きたいと思いますが、蛇口の交換やトイレタンクの部品交換とは違い、料金を全く想像できないという方が多いと思います。
更にブースターポンプを製造・販売しているメーカーやブースターポンプ本体の価格なども一緒にご紹介して行きます。
まず直結給水ブースターポンプの修理について、部品交換の修理に関してはメーカーの対応となる為、メーカーへ問い合わせた方が良いでしょう。
業者による修理で良くあるのが再起動です。
再起動の場合、修理の料金相場は1万円~1万5千円ほどです。
ただし、ブースターポンプが故障した場合は、修理で済むケースよりも本体交換になるケースの方が多いようです。
ブースターポンプの耐用年数は約15年なので、15年を超えていた、又はそれに近い年数で故障した場合は総合的に見て、本体交換がベストという選択になる様です。
次に、ブースターポンプの本体交換にかかる費用の内訳は以下の通りです。
直結給水ブースターポンプ本体交換の料金相場は250万円~400万円ほどです。
高額になっているのはブースターポンプの本体自体が高いからです。
それでは、ブースターポンプを取り扱っているメーカーと本体の価格について見て行きましょう。
直結給水ブースターポンプを取り扱っている主なメーカーをご紹介いたします。
メーカー | 会社名 | 商品 |
---|---|---|
川本ポンプ | 株式会社川本製作所 | KDP3形、SDP-R(W)形等 |
テラルポンプ | テラル株式会社 | MC5型 |
荏原ポンプ | 株式会社荏原製作所 | PNAGM型 |
直結給水ブースターポンプは大型の商品となるので、主要メーカーでも1種類の所があります。
2025年3月現在、テラルポンプや荏原ポンプでは1種類の商品のみで、川本ポンプでは4種類のラインナップとなっています。
ちなみに家庭用のブースターポンプであれば上記メーカーだけでなく、イワヤポンプや日立ポンプといったメーカーでも取り扱いがあり、それぞれ種類も複数あります。
直結給水ブースターポンプの本体価格はいくら位なのかを見て行きましょう。
メーカー | 商品 | 価格(定価) |
---|---|---|
川本ポンプ | KDP3形 | 4,345,000円 |
テラルポンプ | MC5型 | 5,507,101円 |
荏原ポンプ | PNAGM型 | 2,577,000円 |
直結給水ブースターポンプはどれも高額な商品ですが、定価販売されることはまず無く、値引きをされて大体150万円~250万円位の本体価格になることが多いようです。
業者によっては本体価格の値引き額を押さえて工事費用を安くする業者もあれば、本体価格を大幅に値引きして工事費用を高くする業者もあります。
本体の販売価格だけで判断せず、工事費込みの総額でしっかり確認することが大切です。
ブースターポンプを自分で購入することは可能です。
ただし、直結給水ブースターポンプを自分で購入するということはまずないでしょう。
自分で購入する場合は家庭用のブースターポンプに限られます。
家庭用のブースターポンプであれば、インターネット通販のサイトでいろいろな商品が販売されています。
しかし、気をつけなければいけないのは商品の選定です。
自分でポンプを購入しても取り付け出来ない商品だったり、取り付けられる商品でも望んでいた効果が得られなかったりというリスクが考えられます。
どうしても自分で購入したい場合は水道業者などの専門家に相談した上で決めるのが良いでしょう。
ブースターポンプに関連することとして「連結送水管」というものがあります。
では、連結送水管とはどのようなものなのか?連結送水管とブースターポンプにはどのような関連性があるのかを見て行きましょう。
連結送水管は「消防隊員の消火活動に必要な施設の一つ」です。
高層のマンションやビル、地下街など、消火活動が困難になる場所に設置されていて「送水口」と「放水口」があり、消防車から伸ばしてきたホースを送水口に接続して送水し、各フロアの消火活動拠点にある「放水口」にホースを接続して消火活動に使用することができます。
ブースターポンプは連結送水管が設置されている高層建築物の中間階に設けられ、高層階への送水や水圧を確保する役割があります。
ブースターポンプの給水方式は直結増圧給水方式で、貯水槽が必要無い為「景観の良さ」「安定した水質」「貯水槽の定期メンテナンス不要によるランニングコスト削減」といったメリットがあります。
一方、デメリットとしてはブースターポンプが故障して動かなくなると全く水が出なくなるという点があります。
なのでポンプが止まってしまった時はもちろんのこと、まだ動いている状態でも異変があればすぐに水道業者へ連絡することが大切です。
そして、依頼する水道業者は水道局指定給水装置工事事業者(水道局指定店)の中から対応実績のある業者を探しましょう。